弊社では、年に一度の方針発表会を通して、自社の進むべき方向性を確認・共有しているのですが、その中で出てきたひとつの疑問がありました。

それは、「私たち自身も気づいていない、私たちの価値があるのではないか」ということです。

もちろん価値や強みだけでなく、課題や弱点なども含め、自分たち自身のことを冷静に把握できているかというところに問題意識を感じた私たちは、「私たちのことをよく知る方」との対談を通して、それを見つけ出そうとすることにしました。

 

 

タイトルは、「河辺商会を知る人」。

第六回、ご協力いただいたのは”あの企画”でいつもお世話になっている方。

つまり、株式会社ジョイントメディアの野村さんです。

 

 

 


対談

株式会社ジョイントメディア 野村さん
株式会社河辺商会 福田社長


 

野村:共通の知り合いを通じて、うちの会社に来て頂いたのが最初の出会いでしたよね。

 

福田:そうですね。私も、セカンドスタートアップのプロジェクトがひと段落して、さあ2年目というくらいの時に、堺市でジョイントメディアという会社が話題になっているのを聞いて、それで、一回行ってみようかと思ったのがスタートでした。

 

野村:でしたね。これはうちの会社の話になるんですけど、その一年前に、「堺IT推進つくろう未来法人」というプロジェクトを会社で立ち上げまして。これは何かと言うと、堺市内の企業さんが、すごい技術を持ってるはずなのに情報発信が苦手だと思ったとこからはじまったもので。

 

福田:そういうところありますね。

 

野村:それで、我々はウェブサイトを制作したりシステムを作ったりアプリを作ったりしているので。それらは全国どこのお客さんに対してでもできる仕事ではあるんですけど、堺が好きだから、それなら堺の企業さん向けに、何か地域で情報発信のお手伝いとかをしていこうっていうことをやり始めたんですね。で、それから一年後に、御社の取り組みが面白いからぜひ取材させてほしいと堺市から言っていただきまして。

その取材をきっかけに講演依頼などもいただくようになり。注目していただいて。その流れでの出会いでした。

 

福田:それで当時、私が第二創業でビジネスとして立ち上げようとしたことが、野村さんが考えてることと相性が良さそうだと感じたので、何か一緒にできることはないかなと。それが相談したきっかけでした。

 

野村:当時から社長は、新しいことを「まずは自分がやろう」と挑戦されてるイメージでした。どちらかというとその時は、会社というよりは社長個人とのお付き合いだったのですが、その中でファクトリズムというオープンファクトリーのプロジェクトがスタートしまして。そこから、徐々に対河辺商会さんの関係になっていったかなと。

 

福田:普段工場に来られない一般の方々に工場を開放して、実際にその会社がやってるものづくりの現場とかを見てもらう。このファクトリズムという企画は、どんな経緯ではじまったんですか?

 

野村:たとえば、毎日工場の前を車で通ってる方も、「前は通るけどここで何が作られているかは知らない」というのが当たり前じゃないですか。でも、河辺商会さんをはじめ、実はすごいもの、誰もが知ってるようなものを作ってたりするので、それを知ってほしいなと。

今って、「あの商品はこうして作られてる」という文脈で、工場の現場に潜入する番組がゴールデンタイムで放送されているくらいなので、ものづくりの現場をそのまま普段見られない人に開放するというのは需要があるだろうと思いました。エンタメとしてですね。

 

実際、一般の方はとても新鮮な反応をされるんですよ。そこで従業員の方が直接話したりとか、直接その言葉を聞くことで自分たちの仕事の価値を再認識してもらうことができて。仕事のモチベーションアップとかに繋がればというのが、オープンファクトリーの意義です。

 

新卒の方の採用など、河辺商会さんは積極的に取り組まれてたので、ぜひ参加しませんかとお誘いしたわけです。

 

福田:それから毎年、メディアに取り上げられたりなど、話題性が増えていて、参加者もどんどん増えていますよね。こういうのはなかなかないと思います。時代が少しずつ、オープンファクトリーの価値を理解してくれているような。最初の1年目は私自身も、このイベントがどうなっていくのか見えてなかった部分もありましたが。

 

野村:僕が事務局として色々お手伝いしてる中では、一番綺麗にファクトリズムにはまって、一番理想的な形で、会社の中の印象などが変わっていった会社さんが河辺商会さんですよ。

 

福田:その時から、今年で3年目になりますね。

 

野村:そうですね。最初の頃は、うまく社員の方々を巻き込めていないところもあり、初回のデモの際は全行程を社長が案内してたんですね。社員の方々は普通に業務を行なっているように見えました。それが、一年目の本開催の時から少しずつ社員の方が登場されるようになり、そこから2年目の飛躍がすごかったんですよ。どんな風にお伝えされたのかはわかりませんが、社内の案内などはもう全て、各部署の方がしてくださってて。

社長は後ろで見てるだけだったり、下手したらいない場合もあって。

僕らから見れば、それが理想的な形なんですね。社長が一人で考えて動いてるだけだとなかなか社内の雰囲気が変わらなかったりとか。僕らとしては、ファクトリズムが社内の共通言語になって、いい意味でファクトリズムを理由に社内の会話が生まれたりとか、そうしたことが起きればいいなと思っていたので。

僕ら事務局からみたら、他の企業さんと比べても変わった印象が強いので、他の会社さんに対して事例を挙げるときにはいつも河辺商会さんの話をします。

 

福田:一年目はどうしてもね。コロナの影響などもあり、自分なりに落ち込んだ部分がありました。でもそこから、「このままじゃあかん」と。「工場を見せる」というだけでは人は集まりませんからね。集まってくださった方々に喜んでもらう工夫をしなくてはという思いがすごくあったので。

あとはやっぱり、自社商品をそこでアピールして、買ってもらえるようになりたいなと思ったのも大きかったです。ファクトリズムを通して、自社商品の生産体系をワークショップのような形で取り入れたいと。

そうしたときに、たとえば新入社員の子たちというのは、入りたての段階では仕事もまだまだ教えられてからしかできなかったりするわけです。そんな中で、自分が主導で考えて何かをする機会というのは貴重だと思うんですね。こういう、新しい取り組みというのは、ベテランの人含めてみんなが初めてなので、新入社員の子たちにも主導権を持ってもらえるんです。そうすると自分で何かしら考えてやれることもあるし、加えて会社のことを自分で知ろうとするかもしれないと思ったんです。一般の人が来て、会社のことを説明するという時に、自分が河辺商会のことを知っていないと恥をかくわけですから。それが教育にも繋がると思ったので。

 

そうした経緯で、どんどん社員主導に切り替わっていきましたね。

 

野村:なるほど。そういった経緯があったんですね。ただ、最初の頃はすごく身構えられている感じこそすれど、「真面目で優しい会社」という印象はありました。今でもそうなんですが、こちらが気になったことを聞いた時に、「わからない」と言う方がいらっしゃらなくて。みなさん何か、自分の持ってる中から答えてくださったり、その場で他のベテランの方に聞いてくださったり。で、そのベテランの方々も優しくて。若手の方が説明してるのを少し遠目で見守ってて、ちょっと詰まった時に助けに来られたりするシーンがあったりなど。会社全体で、そういう雰囲気がありますよね。

 

福田:ありがとうございます。先ほどファクトリズムの話のときに、「河辺商会はすごいものを持っている」みたいなことを言ってくださってましたが、それはどういった部分ですか?

 

野村:まず薄肉成形などは、ガラケーのように誰でも見たことあるものに使われていて。それがもう、初めて来た時に「ここで作ってたんだ!」となりました。で、同じ棚に他にも誰もが知ってる商品が並んでいて、こちらは驚いてるのに、河辺商会さんは平然としていて、「うん、作ってたよ」みたいな感じだったんですよ(笑)

他にも、すっぴん美人だったり、3色成形だったりの話を聞くうちに、どんどん僕も虜になっていったという感じですね。「これ、この機械でやってるんだ」みたいな。自分の中の、プラスチック成形の概念がすごく変わりました。ほんとに「人に話したくなる技術」だなと。

 

福田:たしかに、技術やノウハウを少しずつ知ることで、イメージは変わるかもしれませんね。

 

野村:そうですね。「キャッチーですごい技術」をいくつも持ってる会社さんだと思います。それでいて、強い課題意識を持って新しいことに挑戦し続けてらっしゃる部分もすごいなと思いますね。

 

福田:そこはもう、製造業全体が持っている課題意識だったりもするので。これまでのように少ない販路に頼ったやり方では立ち行かなくなりますからね。パイが小さくなっているにも関わらず、それをコスト競争で取り合ってるみたいな状況がいつからか顕著になってきて、とても危機感がありました。既存のお客さんを大切にしつつ、何かしらの形で新しいことにチャレンジしないと。

 

野村:販路の部分、そして採用の部分、最後に技術の継承の部分。この3つは業界の三大テーマですよね。いずれも新しい人やつながりが必要になる以上、やっぱり「会社のことをどう知ってもらうか」が重要です。そのためには自分たち自身が「何を伝えたいか」ということを知らなくてはならない。ファクトリズムを通して、事務局自体も協力はさせていただきますが、結局は自分達で考えていかないことには、道は拓けてきませんよね。

 

福田:本当にそうですね。野村さんから見て、私たちが「伝えるべきなのに伝えられていないこと」はありますか?

 

野村:うーん。せっかくたくさんテレビに出ているので、それをホームページやSNSなどでうまくアピールに繋げていけたらいいですよね。

 

福田:たしかに。「何を伝えたいか」をはっきりさせていくのは、自分たちとしてもすごく課題として思っています。せっかくメディアに取り上げられてるのに、それを外部の人に知ってもらわないともったいないなというのは、本当にそう思います。

 

野村:良いことを素直に伝えるのが苦手なんでしょうか。

 

福田:最初のうちはそういうところもありましたが、そうも言ってられませんよね。

 

野村:ウェブ上だと常に情報が残るのでね。良くも悪くも。それで今後、就職とか転職しようとしてる方が調べたときに、「あ、このテレビに取材されてたんだ」とか「日経新聞載ってる」となるといいですよね

あとは、チョップレートのファンの方なんかもたくさんいると思うので。その人たちが、「チョップレート作ってる会社ってこんな会社なんだよ」と言ってくれるようになれば、河辺商会の知名度はもっと上がっていくんじゃないかと思います。そういう意味で、今チョップレートを知ってくださっている人に、「こういう人たちが、こんな風に作っています」というのを伝えていけるといいですよね。

 

福田:なるほどなるほど。早速色々と試してみようと思います。今日は本当にありがとうございました。

 

野村:ありがとうございました。